樹木医師の盆栽に魅せられて、其ノ十一 「初めての黒松と五葉松の石灰硫黄合剤」
初めに
「月の法善寺横丁」という名曲、知っています?
♪包丁一本さらしにまいて旅へ出るのも 板場の修業♪
私は造園業を生業としています。高校卒業後、奈良の造園業社、鳥取の造園業社、京都の造園業社を経て大阪で独立しました。4年前に、両親の故郷鳥取県に訳あって移住してきました。私が駆け出しのころ、職人の先輩が多くの技術を身につけるため「数ヶ所の事業所で仕業をしろ」と、自分のためになると「月の法善寺横丁」の歌詞をつかい教えてくれました。
植木の剪定は、業社ごとに違い、県単位になると大きく違います。極端な話、ある業社が良いと思う剪定方法も、業社が変われば禁じ手になることもあります。とても不思議な世界ですね。庭づくりの技術は、造園技能士という国家資格があり全国共通なのに対して、植木の剪定は国家資格はありません。樹木の剪定は全国一律では、ないという事が大きな理由でしょう。
松の剪定は、造園業社や植木屋の花形で、職人誰もが人一倍「松」の剪定に対してプライドを持っています。職人の多くが「私が」「俺が」松の剪定や知識に一番で、誰にも負けないと思っています。でも、その判断は自己的か、お客様の判断によるものが多く。多くが7対3で自己中心的な考えかたがほとんどです。「松くい虫に」で枯れた時も、「松に元気がない」時も、「地球の温暖化」や「害虫」のせいにして職人は葉巧み位に言い逃れします。(その様な松の症状は、少なからず間違った剪定方法をおこなった事がが大きく影響しています)つまり間違った「黒松」の剪定が全国的に多く見られるのが現状です。
そんな思いの中、昔から「松の盆栽」を極める事がイコール「松のエキスパート」と思っていました。
日本全国「黒松の盆栽」は統一された判断基準があり、「美」がが統一されいます。県ごとの剪定の適期に違いこそありますが、展覧会などで正しくと評価されます。
植木の剪定で全国大会がありますか?
♪包丁一本さらしにまいて旅へ出るのも 板場の修業♪ この言葉を思い出し、新たなジャンル「盆栽」を始めました。
4年前に、鳥取県に移住し海岸で自生している黒松を鉢に植えた盆栽4年生の新人です。
黒松の盆栽に魅せられ、日々図書館で「盆栽」の書籍を借りて読んでいる程度の、新人ですが、現在頭の中の多くを「盆栽」が占めています。
盆栽4年生の新人の日記です。
お手本にならない日記ですが、お付き合いお願いします。
石灰硫黄合剤は殺虫作用と殺菌作用を持つ農薬です。
寒い冬でも害虫は樹木に隠れて越冬するものもあります。また病原菌は樹木に付いたままです。それらは気温が上がる春に活動を始めます。石灰硫黄合剤は「うどんこ病」「カイガラムシ」「ハダニ類」などの駆除が難しい病原菌や害虫などにとても効果を発揮します。石灰硫黄合剤を散布するとしないでは、春以降の害虫や病原菌の被害に大きな違いがでます。
私も修業時代によく散布したことを思い出しますが、石灰硫黄合剤はかなりの悪臭がします。散布時間、散布場所、風向きなどに注意が必要で、また強アルカリ性なので、金属などに付着すると変色や錆びます。車、洗濯物、建物に薬剤がかかったら、なかなか落ちなかったり、落ちないこともあります。散布する場所の樹木以外の物に養生シートをしたり、もちろん散布する本人も完全防備で作業しなくてはいけません。
石灰硫黄合剤は濃い倍率で希釈する農薬ですので、発芽後に散布すると薬害を起こすことがあります。発芽前、樹木が休眠している冬。特に新芽が動き始める1~3月頃が散布時期です。
石灰硫黄合剤は優れた農薬ですが、散布時にとても気負付ける必要があります。そんなこともあり私は独立してからは、お客さんがどうしてもという時だけ散布していました。
令和3年 2月23日
今日は天気も良いので、盆栽の黒松と五葉松に石灰硫黄合剤を散布しました。
私が読んでいる本によると「ムロに入れる前と出した後に、カイガラムシ防除と病気予防に石灰硫黄合剤(30倍希釈液)で消毒をする」と書いてあります。
12月と2月の2回散布が必要ということですが、私は12月は忙しく、天気も悪い日が続き
散布できませんでした。言い訳ですが。
去年は石灰硫黄合剤を散布していません。今年初めてです。
上の写真の黒松の盆栽に去年の夏に古葉に「赤化症状」が出ました。「ダコニール」という殺菌剤を数回散布しましたが、病原菌が残っているはずです。今年は石灰硫黄合剤の効果に期待します。
上の写真は去年の秋に購入した「千寿丸」と「宮島五葉松」です。
残念なことに「千寿丸」一本が植えて数日で枯れてしまいました。根の状態が悪かったのでしょうか?非常に残念です。
他の苗木は元気よく冬を越しました。葉色が悪いので今年は肥料を与えて樹勢を付けたいと思います。この苗木にも石灰硫黄合剤を散布しました。
上の写真は右から「展着剤」「石灰硫黄合剤」「1ℓの霧吹き」「エマールの計量カップ」です。
今回散布するは10本程度の盆栽です。1ℓもあれば十分です。噴霧器を使う程の量ではないので百均で購入した霧吹きを使用しました。希釈倍率ですが、1ℓに対して30倍とは何㏄?
ネットに、使用量に希釈する場合に必要な薬剤が計算できる農薬アプリがありましたのでもしよければ。数字を入力するだけで便利でした。
http://農薬希釈早見表 面積換算表 http://www.s-boujo.jp/kihon/file/14sonota/1411.pdf
1ℓに対して投入薬量は33mⅼ.gでした。とても少量です。私がいつも使用している計量カップは値がちっさすぎます。そこで思いついたのが洗剤の計量カップです。20mlで刻んであるので丁度使い勝手が良かったです。石灰硫黄合剤は「展着剤」が推奨されていますが、投入薬量が少量過ぎましたので入れなかったです。
植木鉢を養生してしっかり、葉裏、幹まで滴り落ちるまで散布。
硫黄の匂いが鼻につきます。
石灰硫黄合剤は原液が濃い黄色です。希釈しても倍率が濃いので新聞もご覧の通り。
松も若干黄色になりました。乾くと白っぽくなります。
全ての松、五葉松に同様に散布しました。しっかり散布しましたが、半分残りました。
やはり噴霧器を使う程のことはありませんでした。匂いがなかなか取れずらくて、後かたずけが大変です。
この日は風が強く盆栽程度の木なら農薬散布で来ましたが、予定では「八朔」の木にも
農薬散布する予定でした。「八朔」の木には「石灰硫黄合剤」と同じ効果のある「マシン油」を散布する予定です。次のブログで紹介したいと思います。
令和3年2月22日
最後に一昨年挿し木した「沈丁花」です。去年秋に地植えにしましたが、去年の春は苗床で花を咲かせてくれました。挿して1年で花と香りを楽しませてくれる「沈丁花」。
とても挿し木しやすい木です。もしよければだまされたと思ってチャレンジしてもおもしろいですよ。苗床さえ問題なければほぼ100%の成功率です。
最後までお読みいただきありがとうございました。