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樹木医師の盆栽に魅せられて、其ノ十二 初めての黒松の接ぎ木

はじめに

戦時中の管理不足などによる古くからの名木の復活と存続を目指して取り組んだのが接ぎ木法ということです。黒松の盆栽の接ぎ木は昭和37年~38年頃から始められた比較的新しい木法。初期には失敗も多くあったようですが、研究の成果もあり現在は黒松の接ぎ木は、ほとんどが活着するまでとなった盆栽界の常識ということです。

恥ずかしながら私は本を読むまでは黒松が接ぎ木できることを知りませんでした。黒松でも接ぎ木ができることを知って、自分の盆栽をまじまじと見ていると、ここに一枝あれば良いのにと思うばかりです。それならば挑戦してみるしかありません。ということで、今回は初めて黒松の接ぎ木に挑戦しました。

令和3年2月26日

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今回使用した材料と道具です。
恥ずかしながら「ミズゴケ」も初めて使います。

接ぎ木の時期は春でも秋でも可能とされていますが、最適期は芽吹き直前の春の2月下旬~3月中旬とされています。また1年間は肥培につとめ、樹勢を乗せているのが条件とあります。

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写真の黒松は海岸で採取して約4年になります。幹は鉛筆程の太さです。

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同じ盆栽の裏からの写真です。ヒョロヒョロと長い素材でしたので、素人ながら適当に針金掛けをして、高さだけは低くしたというだけのお粗末な格好です。

下枝まで約10㎝あり、今回は根元近くに接ぎ木をして黒松のミニ盆栽に改作したいと思います。

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今回は私が愛読している「図解ミニ盆栽 クロマツ」を参考にしています。本によると下から上に切れ込みをいれています。私が思うに下から切れ込みを入れた方が雨などの水分が活着面に入るのを防ぐためだと思い、この方法でしました。(ほとんどの本が上から下に切れ込みをいれています)

切れ込みの長さは接ぎ穂より深く、木質近くまで切り込みました。

このかげんが難しかったです。
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接ぎ穂は充実した枝先の枝を選び葉を三,四葉残し切りました。

私が思うに元気な芽の接ぎ穂が活着のポイントではないかと思います。

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接ぎ穂を鋭利な刃物で第一刀、1cmほど切ります。第二刀は裏を0.5mmほど切り返しました。

ここでのポイントはとても作業が細かいので、刃物の切れ味が悪いと失敗につながると思います。(切った断面がキレイなほど活着しやすいのでしょう。)

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接ぎ穂と台木の形成層を合わせるように、第一刀を内側にして奥まで差し込みます。

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接ぎ穂と台木の形成層どうしをを密着させ、セルパラテープを伸ばしながら巻いて固定しました。

ここでのポイントはセルパラテープはとても伸びるので伸ばしながら隙間のできないように巻く事だと思います。

*「図解ミニ盆栽 クロマツ」ではビニールテープを使用しています。

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上の写真は以前仕事で「クロガネモチ」を接ぎ木した時に購入した接ぎ木テープです。

セルパラテープを引っ張りながら巻くとテープどうしが密着するので、このテープを利用すると、乾燥を防ぐための袋がけなどの作業が不要とのことです。またテープは互いに密着する性質で、テープは半年ほどで風化してボロボロになります。従って接ぎ木部分がくびれる心配もありません。

私持っている接ぎ木の本によると「セルパラテープの出現でこれまでかなりの技術と手間がかかる接ぎ木が一挙に解消され、手軽に接ぎ木ができます。このような便利なテープが出現したので家庭園芸の中の接ぎ木がもっと普及するようになりると考えています。」と筆者自身が書いていました。

だまされたと思って私もかいました。「クロガネモチ」を接ぎ木した時は袋がけはしませんでしたが、成功率は高かったです。

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ということですが、今回は盆栽の本で紹介されている通りに、テープの上から水に浸した水苔を軽く絞り、接ぎ木部に少量あてタコ糸で縛りました。

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百均で購入した細長いポリ袋ですっぽりと覆いました。水苔の湿気がポリ袋に充満し活着を助けるとのこと。

どうしても、もとを縛る際に隙間ができます。作業的には一番苦労したのがこの作業でした。

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この盆栽は保険もかけて2カ所、接ぎ木をしました。

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4本の盆栽、計9か所接ぎ木をしました。

せめて半分は成功してほしいです。

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袋がけしてから数十分。

徐々に袋内部が白くくもりはじめました。湿気が袋に充満したことがわかります。

 

まとめ

今回の作業で感じたことは台木と接ぎ穂のナイフの入れ方が難しかったです。3本目の木から少しずつ慣れて作業も早くなりましたが、切り方が正しかったのかどうかは結果が教えてくれるでしょう。

接ぎ木後、半月ほどで冬芽が上に持ちあがり始めるので、ポリ袋の先端部を切り徐々に外気に慣らすとのこと。

わりと早く成功か失敗かがわかります。また結果はブログに載せますので読んでください。

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恥ずかしながら挿し芽も本を読むまでは、松は挿し芽ができるとは知りませんでした。

写真は去年7月頃に「芽切り」と「剪定した枝」を挿した黒松の挿し芽です。春に挿した挿し芽は全滅、7月に挿した挿し芽は約半分が成功しました。今年も挿し芽にチャレンジしたいと思いますが、ローソク芽よりもむしろ葉が沢山ついた枝付きの芽(切った小枝をそのまま挿しました)がついたことに驚きました。

パッケージは新しくなっていますがセルパラテープです。もしよければ。