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樹木医師の、のんびりとした田舎暮らし 其ノ十 初めてのシイタケの原木栽培

はじめに

 関西から移住して早5年。毎日、田舎暮らしですが、飽きることなく、毎日楽しく暮らしています。

下の写真は、お爺さんから相続した雑木林です。お爺さんが植えた「クヌギ」の木が数十本植林されています。今年こそは、このクヌギの木を利用してシイタケの原木栽培にチャレンジしたいと思います。

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去年の春(4月頃)に原木栽培にチャレンジしようと、クヌギの木を切り倒しました。

切り倒してから、図書館で借りてきた本が下の写真の本です。恥ずかしながら、去年の春に切り倒した木は時期が悪かった事を本を読んでしりました。

今回は、この本をお手本に、去年の失敗を反省して再度シイタケの原木栽培にチャレンジしたいと思います。。

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クヌギは、本州(青森を除く)から九州までの広い範囲に自生するブナ科の落葉高木です。「クヌギ」「ブナ」「カシ」「コナラ」などの木の実を、ドングリといいます。

 シイタケの原木栽培に適している樹種は、「コナラ」「クヌギ」「クリ」「シイ類」「カシ類」「シデ類」です。

令和3年2月15日

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キノコの種類にかかわらず、原木の伐採には適期があります。栽培用の原木は、葉が落ち始める秋期から、発芽直前の春期にかけての休眠期間に伐採するのが鉄則で、これ以外の時期に伐採された原木を用いると、充分な栽培結果が得られません。

休眠期間は、樹幹内に蓄えられた樹木の栄養素は、この期間中がもっとも豊富です。また、植え付けられた菌は菌糸を伸ばして生長しますが、原木の樹皮はこの菌を保護する役割を果たしており、その樹皮が内材ともっとも密着しているのが休眠期であることであり、このことから休眠期に切る意味があります。

切り倒した伐木は、内部の水分を抜くために、通常2~3週間は切り倒したままで放置します。これを「枝干し」と呼びます。

 

令和3年2月15日、切り倒した原木は、約9mありました。去年の失敗は原木を切る時期を完全に間違っていました。

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上の写真は、去年の春に切ったクヌギの切り株です。ひこばえが生えてきています。

雑木などは、切り倒しても20年ほどで元どおりになるといいます。再生力の高さに驚かされます。

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よさそうな枝を一本残し、後は切りました。上の写真。

令和3年3月7日

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約二週間、経過しましたのでシイタケの栽培法に合わせた寸法に切りそろえます。

この工程を「玉切り」といいます。

シイタケの普通栽培は、原木の太さ(直径)6~20㎝。原木の長さ90~150㎝とありますが、直径5㎝の原木しかとれなかったとしても、また、長さが50㎝しかなかったとしても、りっぱなキノコは栽培できるとあります。原木一本当たりのキノコ発生量が少なくなるだけのことです。細く短い原木は乾燥速度が早いため、伐採から種菌の接種までの期間を、標準の場合より短くする必要があります。

今回、切り倒した原木は約9mあります。一番太い幹元は直径約20㎝。1メートルで切りそろえ、直径7~20㎝の原木9本とれました。

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玉切りの工程が終わると、次は、その原木に種菌を接種しますが、原木内の残存水分が36パーセント程度の時期が最適とされています。原木をこの状態にするためには、玉切りした原木を、直射日光の当たらない日陰に置いてしばらく乾燥させてやらなければなりません。それは、栽培の対象となるキノコは、いずれも死物寄生菌であり、接種された菌が菌糸を伸ばして生長するためには、その木質部がほぼ枯死した状態でなければなりません。つまり、伐採後に枝干しして水分を抜き、そのあと玉切りした直後には、まだ原木が生きた状態にあるために、玉切り後にさらに乾燥させて枯死状態にします。

水分36パーセント程度の状態は通常、木材を伐採してから、30日前後の日数を要します。したがって、伐採してから玉切りまでの間、2~3週間をそのまま放置したら、種菌を接種するまでには、玉切り後なお10~15日程度、日陰に置いて乾燥させます。

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原木を乾燥させますが、直射日光を防ぎ、徐々に乾燥させるために寒冷紗を利用。

令和3年3月13日

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原木の準備が整ったら、次の工程は種菌の接種となりますが、原木の伐採に適期があるのと同様に、種菌の接種にもふさわしい時期があります。

キノコの種類によっても多少の差異はありますが、キノコの菌糸は、おおむね外気温が5℃を超えると活動を開始し、20~27℃あたりにかけて生長の盛期を迎えます。

1日の平均気温が5~10℃になるころが接種の適期とされています。近畿地方平野部では2月中旬~3月中旬、関東地方南部では2月下旬~3月下旬、東北地方太平洋側では3月中旬~4月中旬、そして北海道札幌地方では3月下旬~4月下旬頃になります。キノコ農家では、桜の花が咲くまでに接種を終了するのが通例。

梅雨時や盛夏など気温や湿度の高い季節には、ほかの雑菌類の活動も活発なため、キノコ菌糸の伸長がこれによって阻害されつ確立が高く、一方、寒冷期に向かう秋期には、接種をしても菌の活動自体が停滞してしまうことになります。

 

令和3年3月13日いよいよ接種に取りかかります。接種を行うあたっては、上の写真の道具「インパクトドライバー」「ストッパーが付いたドリル刃」「ハンマー」「手押しブロワ」を準備しました。

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上の写真は今回ホームセンターで購入した、「日本農林種菌株式会社」のしいたけ棒型200個×2袋です。なんでもパッケージに「当社従来品種より1年早く発生」と書いてあるのが、選んだ理由です。

種菌は「丸クサビ型」で直径8.5mm、長さ18mmとなっています。

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上の写真はインパクトドライバーの先に取り付けたストッパーが付いたドリル刃です。

直径8.5mm、深さ25mmの穴が開けられます。

打ち込んだ種菌の先が少し空間ができるようになっています。

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上の写真はハンマーで打ち込んでいる様子です。

木口から約5㎝、駒の間隔は15~20㎝。次の列はチドリに列の間隔4㎝あけて打ち込みました。

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 原木の大きさ(体積)に対して、あける穴の数には適数があります。その数を求める標準的な数式は、原木の直径(㎝)×長さ(m)×2~2.5=打ち込み種個数。

例、長さ1m、直径10㎝の原木ならば、「10×1×2~2.5」となり、打ち込む種駒の数は20~25個が標準となりますが、早期発生や雑菌の繁殖防止を目的に、標準値の1.5~2倍の種駒接種を行うことも可能。また、枝を落としたあとの節部や傷口、虫に喰われた部位、木口の周辺部などは、雑菌が侵入しやすいので、種駒を余分に打ち込むようにします。

今回は、木口20㎝~10㎝の原木5本に合計で400個打ち込みました。

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木口が7~10㎝の原木が3本残りましたので、残った原木には「なめこ」の種菌を打ち込むことにしました。

上の写真は「日本農林種菌株式会社」のなめこ棒型200個です。

原木を利用したキノコ栽培法には、先に行ったシイタケの原木普通栽培(長木栽培)に対して、なめこは大径木の原木を短く切って利用する「短木栽培法」が本では紹介されていました。

短木栽培は原木の断面(木口面)にオガクズ種菌を塗着する方法で接種を行いますが、肝心な「なめこオガクズ種菌」が手に入らなかったのでシイタケと同様に原木普通栽培方で行うことにしました。シイタケ同様に種菌を打ち込み作業終了。

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次の工程は「仮伏せ込み」です。

接種された種菌が活着して、原木内に菌糸を伸長させて成熟し、キノコを発生させるまでの期間、それにふさわしい状況下に原木を置いて管理することを「伏せ込み」と呼びます。

この伏せ込みには、接種した種菌を原木に活着させる段階と、活着した種菌の菌糸を原木内に深く伸長させて成熟させる段階との2工程があり、今回行う工程は仮伏せ込みになります。

仮伏せは、接種した種菌をなるべく、かつ充分に原木に活着させるために、原木はやや渇いた状況を保ちつつ、同時に種菌には必要な水分が保たれている状態が望ましい。したがって、仮伏せでは、種菌の湿度保持のためにしばしば水をかけることも必要となるし、乾燥過度をもたらす直射日光からも遮蔽してやらなくてはなりません。

これらの要件を満たすためには、風通しがよく、かつ排水性に優れた薄暗い場所を選ぶこと、明るさと暗さの比率が7対3程度の若い樹林のなかが理想的です。

令和3年3月13日

山に上がって雑木林に仮伏せを行います。保温と保湿のためにその周囲を「寒冷紗」でおおいました。

このままで放っておいても活着することは多いとのことですが、なお活着率を高める為に、ときどき原木の状態を調べ、好天続きで乾きすぎのようなら散水して水分を補給したと思います。

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 こうして仮伏せしておくと、通常は、1~2ヶ月後に木口面に伸長した菌糸が白く浮きでてくるという、これが見られた場合には無事活着した証拠とのこと。

2ヶ月後には、次の工程の「本伏せ」をブログに載せたいと思います。

 まとめ

お爺さんが亡くなって十数年経ちます、ひょんなことから相続することに。

お爺さんが植えたクヌギの木、まさか孫の私が利用するとは思ってもいなかったはず。かたちはどうであれ、お爺さんが喜んでいるに違いないと思うと、少しうれしくなりました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

原木ではなく、瓶や箱、耐熱ポリ袋などの容器を用いた屋内でも可能なキノコ栽培の方法も載っています。もしよければ。