樹木医師の松くい虫の予防と対策
はじめに
全国各地でアカマツ、クロマツなどをの、「マツ枯れ」「マツクイ虫」の原因である「マツノザイセンチュウ」は、このカミキリムシの媒介によることがわかりました。
以来マツ類の最重要害虫となりました。
【初夏】
😁カミキリムシの成虫は5月から7月頃にかけて、マツの枝をかじって食べます(後食と
いう)。ときに、カミキリムシの体内に潜入していた線虫(マツノザイセンチュウ)が
マツ傷口から樹体内に侵入します。
😁マツノザイセンチュウは、その後樹皮の内部にある樹皮脂道を通って速やかに上下
に分散し、樹皮脂道周辺の細胞に口針を刺しこんで吸汁しながら、徐々に繁殖しま
て、木を衰弱させます。
😁また、マツノマダカマキリの産卵は6月~10月です。樹皮につけた傷口に排卵管を差
し込んで卵を産み付けます。1ッ所1粒ずつやく100個産卵します。1週間程でふ化し
ふ化幼虫は、内樹皮から材内に侵入し、不規則な孔道を作りながら食害を続けて成長
します。
🙍マツノザイセンチュウとマツノマダカマキリの幼虫とでマツを食害するのですね。
😁葉で生産された養分を根から木全体へと運んでいる内樹皮や根から吸収された水分を
木全体えと輸送している辺材部分を食害されて、やがて養分、水を送れなくなり、枯
れてしまいます。
【夏から初秋】
😁8月頃から10月初頃に松の葉の色、つやが悪くなり枯れます。その間、葉の色が悪くなり始めて約1週間程です。気が付いたときはすでに手遅れです。
【冬から春】
😁産み付けられた、マツノマダカマキリの幼虫は幼虫のまま越冬します。春から初夏に
かけて蛹になり羽化して成虫になります。冬を越した新たな線虫(マツノザイセンチ
ュウ)が、カミキリムシの体内に潜入します。マツノマダカマキリは5月から7月に樹
皮に約6㎜の円形の穴をあけ一緒に外に飛び出します。
🙍マツノザイセンチュウは自らマツからマツに移動出来ないのでマツノマダカマキリの
体内に侵入するのですね。
😁成虫のカミキリムシは5月から7月にかけて新たのマツへ飛び、脱出した成虫は、3年
生位までの若枝の樹皮をかじって栄養を摂取(後食)します。
【防除法】
😁健康なマツは、マツノマダカマキリが産卵する時、樹皮にかみ傷をつけても樹が健康
であえば、樹脂(マツヤニ)が盛んに分泌されるので産卵ができません。松を健康に育
てることが大事です。
😁そのためには、寒肥を毎年やるように心がけ、強い剪定や葉むしりをさけ、排水にも
注意しましょう。
😁スミパイン乳剤の50~100倍液を、成虫の発生初期の6月上旬頃と発生中期の6月中旬
~下旬の2回、500㏄/1㎡を樹幹に散布します。
😁また、ダダイシストン粒剤またはエチカンTD粒剤の土壌施用も有効ですが、樹幹の
直径15㎝以下が限度とされています。
【枯損木の処分】
😁マツノザイセンチュウによる被害の早期発見は、判りにくいですが、葉が黄変した時
は手遅れです。被害木は早期に伐倒、搬出して焼却します。
😁伐倒木の搬出が困難な場合は、T-7.5バイサン乳剤やバークサイドオイル(MEP油剤)
などの利用して、材の表面にたっぷりと散布します。これらの薬剤は羽化脱出する成
虫に対して防除効果が高いものです。
まとめ
近年、ナラ類やシイ、カシ類の木が枯れる「ナラ枯れ」の被害が広がっています。
これは、「カシノナガキクイムシ」という昆虫が「ナラ菌」という病原菌を木に運びこむことによって引きおこる樹木の伝染病です。
昔から「テッポウムシ」と呼ばれる事もあるカミキリムシ、多くの樹種に被害がでます。幹に穴をあけて中に卵を産み付ける際、木くずがでます。大切な庭木は木の足元の除草をして、6月~9月頃に木くずが落ちていないか気を付けましょう。
「樹木別でわかる 病害虫全科」を引用文献とさせてもらいました。