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樹木医師のシロアリは益虫Or害虫

はじめに

現在、地球上の生物種の種数は、数百万から、3,000万種以上と見積られていますが、そのうち名前がつけられている種は、せいぜい170万種にすぎませんそのうち昆虫は約50~60%を占めています。多くの昆虫は森林にいて、植物を餌にしています。

植食性昆虫は葉肉組織を食べる食葉性昆虫。口吻で植物液体を吸う吸汁性昆虫。

虫こぶを形成してその内部を摂食、吸汁するゴール昆虫。種子の内部を食べる昆虫、蜜を吸うかたわら花粉を運ぶ役割を担う昆虫など、植物のおよそすべての部位に多様な昆虫が存在します。やわらかい葉や実を食害するのは分かりますが、シロアリは何故硬い樹木の幹を食べられるのでしょう。

 

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【シロアリの特徴・社会】

シロアリは(ゴキブリ目)に属する不完全変態たいの昆虫です。幼虫は成虫とほぼ同じ姿です。一つの巣には、王と女王は1匹ずつ存在し、働きアリ(職アリ)、兵アリなどの階級それぞれに雌雄が含まれる、社会性昆虫です。

体の大きさや巨大な群れを作る社会性昆虫であることなど、アリとの共通点が多いですが、アリとシロアリは全く異なった昆虫です。アリは蜂に近く。シロアリはゴキブリに近い昆虫です。また、アリは女王アリを中心とした女性社会です。

シロアリは王と女王を中心に、2~3%の兵アリ、残りの働きアリ(職アリ)で構成され、生まれた子供は親と同じ姿で、ある程度成長すれば働きアリ(職アリ)として、王、女王を助け、巣を作るなど作業を行います。働きアリ(職アリ)は雄雌両性があり、それらは成長してゆくにつれ、1部のものが兵アリ、ニンフ(結婚飛行に出る雄と雌のつがいでやがて羽アリになる個体)、有翅虫(羽アリ)、副王、副女王(複数おり王、女王がコロニー内にいる限り生殖は行わない)に分化します。。

コロニーがある程度大きくなるとニンフという階級のアリが誕生します。やがて羽アリとなって一斉に飛び立ちます。飛び立った羽アリは着地すると羽根がとれ、雄と雌が新たにカップルとなり新しいコロニーを作ります。

雄雌は王、女王となり、交尾、産卵を繰り返します。

 

 【シロアリの種類・食害】

日本には22種類のシロアリが生息しており、そのうち住宅に被害を及ぼすのは5種類ほどで、被害の8~9割を占めるのは、日本全土に分布する、『ヤマトシロアリ』『イエシロアリ』の下等シロアリです。この2種はいずれもミゾガシラシロアリ科に分類されます。

シロアリは朽木や木材を食害しますが、食物を求めて巣からアリ道を掘る過程でプラスチックやゴム類も食害します。シロアリは、気温の上昇と共に活発になります。

 

『ヤマトシロアリ』

この種は、枯れ木の中に巣穴を作って生活をしています。巣穴は網目状なった孔の連続からなり、ヤマトシロアリはその周辺を食べながら巣を広げます。場合によっては表面に木くずを積み重ねたトンネルを造ってその中を移動する。

ヤマトシロアリはお風呂場、洗面所、台所の床下などの水回りなどの湿った木材を食害します。日本の住宅を食害するシロアリの8~9割をヤマトシロアリが占めます。広い面積を食害することは少ないですが、少しずつ食害が進みます。4月~5月に新天地を求めて飛び立ちます。

 

『イエシロアリ』
この種は、地下に穴を掘り、木くずや土で固められた大きな巣を作ります。この巣を中心にしてトンネルを掘り、あちらこちらを食うので木造家屋などは大きな被害が出ます。食欲旺盛です。6月~7月に新天地を求めて飛び立ちます。

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シロアリの塚

【シロアリの巣】

シロアリはすべて巣穴をつくり、その中に王と女王がいて、働きアリが餌を運びます。餌となる材の中に巣を作るもの、地表に作るものが多いですが、熱帯や乾燥した草原のものは、地表に盛り上がったアリ塚を作るものが多いです。一つのアリ塚には数百万匹棲んでいます。アリ塚は土や自身の排泄物などでできています。

 

熱帯域では『アリクイ』が、前足の強い爪をつかい、アリ塚に傷を付けて、長い吻と長い舌を傷つけた穴に舌を突っ込んでシロアリを食べます。チンパンジーはアリ塚に唾液で湿らせた小枝を差し込みシロアリを釣り上げ食べます。日本でもシロアリを捕食する『オオハリアリ』がいます。

 

【シロアリの予防】

家の近くに近寄らさないためにも、腐敗のした木材はシロアリの好物です、家回りに廃材を置かない、家回りの木材製品、小屋などに防腐処理を行うなど予防を心がけましょう。家の中はお風呂場、洗面所、台所の床下などの水回りなどの湿った木材や屋根裏、床下、基礎などにシロアリの専用薬剤処理を行いましょう。

自分で不可能な場合は専門業者に依頼しましょう。新しい家でも被害の発見されます。コンクリートの構造物も被害が確認されています。目に見えない場所に潜むシロアリは被害が出る前の予防が一番です。

 

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【シロアリの利用】

樹木を支える構造物として木部の大部分を占める「セルロース」(地球上で最も多く存在する炭水化物)「リグニン」などの難分解性の高分子化合物は、樹木の、昆虫に対する一種の防御物質ともいえます。「セルロース」自体は窒素を含まず、栄養価は低い、このため、これらを利用できる昆虫は特殊化したものに限られます。シロアリは、特殊化した消化管内に共生微生物を住まわせ、消化酵素を分泌させることで、「セルロース」を酢酸まで分解し、これをシロアリは栄養源としています。

 

担子菌類と共存するキノコシロアリ類は、野外植物の朽木を採集してくると、巣の中に食べ、その糞を積み上げる。共生菌が糞の中で成長し、糞に含まれる成分を分解する。シロアリは分解された糞をまた食べる。糞をまた積み上げる。これを繰り返し、すべてが吸収できるまで繰り返します。植物の朽木は二酸化炭素と水になるまで分解されます。

シロアリは食物連鎖の重要な役割を果たして 朽木を食べ分解し、生物が生活をするための必要な塩類を作っています。土壌形成という大事な役割を果たしています。

 

シロアリの消化器官内の共生菌による「セルロース」分解プロセスが「バイオマスエタノール」の製造に役立つことが期待され、琉球大学理化学研究所等で研究が進められています。

 

まとめ

植物は植生昆虫によって一方的に食べられるだけではなさそうですね。

植物にとって一番の害虫は人間何でしょうか。つくづく考えさせられます。